GM-CSF吸入時の呼吸方法
最初に肺に貯まった空気を吐きます
→吸気3秒→息止め3秒→呼気3秒(合計9秒・1分間に7回の呼吸)
(参考リンク)ノーベルファーマ社:サルグマリンの使用方法 吸入方法について
- 最初に肺に残っている空気を全部吐き出すつもりで、お臍の下をへこませながら息を吐きます。
- 吸入器のマウスピースをくわえて、噴霧ボタンを押して凹んだお腹をふくらませるようにしてゆっくり息を3秒かけて吸い込みます。
- 噴霧ボタンを離します。息を3秒間止めます。
- マウスピースをくわえたまま、噴霧ボタンを離したまま、お臍の下をへこませることを意識して、ゆっくり息を3秒くらいかけてすべて吐き出します。
- 2~4 を繰り返します。
- 薬液が無くなってくると、ネブライザーの噴霧音がかすれた音に変わります。それまで 2 と 3 と4の操作を繰り返し行ってください。出てくる霧が時々しか見えないようになったら吸入を終了します。
うまく吸えないとき
うまく吸えなくてもがっかりすることはありません。この治療は24週間以上続きます。1週間くらいは練習だと思えばよいのです。吸入に疲れたら、スイッチを止めて休んでもいいのです。
あせらずに、マイペースに吸入しましょう。
腹式呼吸とは?
腹式呼吸の正しいやり方は、息を吸うときにお腹を膨らませて、吐くときにお腹をへこませます。胸ではなくお腹を膨らませることを意識して呼吸すると、より深い呼吸ができます。慣れないうちは、特に息を吐くことに意識を集中するとよいでしょう。横になることで自然と腹式呼吸ができるので、慣れるまで仰向けになって行い、慣れてきたら座った状態や立った状態で、腹式呼吸を行うとよいでしょう。
息止めをする意味
GM-CSFを含んだ粒子を含む空気は、肺胞の手前の呼吸細気管支の所までくると、1秒間に0.9 mmと非常にゆっくりになります。空気が肺胞に入るのには、気管のところと肺胞のところとでは、1秒以上のずれがあって、呼気の時にも、入ってきた空気は肺胞の中へと移動していると思われます。吸った空気とその中にあるGM-CSFの粒子が肺胞に移動して壁にくっつきやすくするのに、3秒間息止めをするのです。
在宅酸素療法を受けている場合の吸入療法について
「呼気3秒→吸気3秒→息止め3秒」の、合計9秒で呼吸すると、1分間に7回の呼吸となります。
成人の呼吸回数は、1分間に12~20回ですから、かなりゆっくりとした呼吸法です。
ちょっとした運動や歩行で息切れを感じてしまう患者さんは、肺活量が減っていて、このゆっくり呼吸をすると、息がきれてつらくなるかもしれません。そういう患者さんには、次の方法をおすすめします。
- パルスオキシメーターを指に装着して、酸素飽和度を測ります。
- 在宅酸素用の鼻カニューレから3リットル/分の濃縮酸素を吸います。
- パルスオキシメーターの酸素飽和度が96%以上であることを確認します。
- 酸素濃縮器のスイッチはそのまま、鼻カニューレもそのまま、吸入器のスイッチを入れ、GM-CSF吸入を開始します。
- 息が苦しくなったり、パルスオキシメーターの酸素飽和度が90%よりも下がったら、吸入は一旦中断して、鼻カニューレからの酸素を吸って呼吸を整えましょう。
- 1回の吸入に30分以上かかるかもしれません。あせらずにマイペースで吸入しましょう。
在宅酸素療法を受けていなくても、咳が普段から出やすい人は、吸入すると気管や気管支への刺激から咳が出て、吸入ができなくなるかもしれません。その時は、休んで落ち着いてから、吸入を開始してください。
「パリLCスプリントスターネブライザー」をお使いの場合は、コンプレッサーの送気ホースを酸素ボンベや酸素濃縮器からのホースに付け換えると、高濃度の酸素を吸いながら吸入することができます。詳しくは村中医療器株式会社にお問い合わせください。
特に重症呼吸不全がある場合の吸入療法について
一般的に自己免疫性肺胞蛋白症の患者さんでは、下肺野(肺の下の方)の肺胞により老廃物が溜まっていることが多いため、座位(座った状態)で吸入すると、効率よく吸入した霧(ミスト)が下の方の肺に入りやすいと思われます。
というのは、重力でミストは下の方に入りやすいからです。
ところが、重症の患者さんでは、下の方ばかりでなく、上肺野(肺の上の方)の肺胞にも老廃物が溜まるので、座位がよいとは、一概に言えません。
酸素を吸っている人は酸素吸入を停止し、パルスオキシメーターを指に装着して、以下の体位を試してみてください。
それぞれの体位で5分後の酸素飽和度を測ります。
最も高い数値が、GM-CSF吸入に適した体位です。
- 背臥位(仰向け)
- 右側臥位(右側を下にして横になること)
- 左側臥位(左側を下にして横になること)
- 腹臥位(うつ伏せ)
- 座位(座った状態)
酸素吸入を一時的にも止められない患者さんは、主治医の先生と吸入方法はよく話し合ってください。重症の肺胞蛋白症で、肺活量が減ってしまっている患者さんでは、動脈の中の炭酸ガス量が増えていることがあります。そういう患者さんに急に高濃度の酸素を投与すると、呼吸回数が減って意識がなくなることもあります(CO2ナルコーシスといいます)。このように極めて重症な患者さんがご家庭でGM-CSF吸入療法を開始されることはまずないと思いますが、できるだけ入院で医師や看護師にみてもらいながら開始するようにしてください。