自己免疫性肺胞蛋白症(APAP)の簡易血清診断
- 医師の方へ:
抗GM-CSF抗体キット「KBMラインチェックAPAP(血清抗GM-CSF自己抗体診断薬)」の使用法についてご不明の点がございましたら お問い合わせフォーム よりご相談ください
ラインチェックAPAPは、血清中の抗GM-CSF自己抗体の陽性陰性を簡便に判定できるキットです。
下の写真のような形をしており、ノーベルファーマ社より発売されています。
ご使用になられたい方は、ノーベルファーマ社( KBMラインチェックAPAP )、もしくはカスタマーセンターにお問い合わせください。定価が13,800円(保険点数1,380点)です。
フリーダイヤル:0120-003-140
平日 9:00~18:00(土・日・祝日、会社休日を除く)
各部の説明

測定の原理
血清検体をテストデバイスの血清滴下部[S]へ滴下した後に、展開液を展開液滴下部[D]に滴下します。血清は、展開液とともに毛細管現象により、テストストリップ上を移動します。
コンジュゲーションパッドに含まれている金コロイド標識抗ヒトIgGモノクローナル抗体は、血清中のIgGと免疫複合体を形成
しながら展開部を移動します。その免疫複合体の中に抗GM-CSF抗体複合体が存在すれば、テストストリップ上の抗GM-CSF抗体判定部[T]に固定化された遺伝子組換えヒトGM-CSF
に捕捉され、テストライン出現位置に集積し赤紫色のラインが出現します。
本品は、この赤紫色のラインを目視で確認し、試料中の抗GM-CSF抗体の有無を判定します。一方、遺伝子組換えヒトGM-CSFに捕捉されなかった免疫複合体は展開部をさらに移動し、展開部のコントロール判定部[C]に固定化された抗マウス免疫グロブリン抗体により捕捉され、コントロールライン出現位置に紫色のラインが出現します。


ラインチェックAPAPに様々な抗GM-CSF自己抗体濃度を持つ血清検体を滴下したときのテストラインの見え方
1.テストラインの見え方は、血清中に含まれる抗GM-CSF自己抗体の濃度によってかなり異なります。
2.ラインチェックAPAPは定性検査です。抗GM-CSF自己抗体濃度が高いほど、テストラインの赤色は濃くなる傾向はありますが、赤色の濃さは自己抗体濃度に比例しません。これは、血清中に含まれる妨害物質(脂質など)により金コロイドの凝集が影響されるからです。
3.現段階では、抗GM-CSF自己抗体濃度が3.5U/ml未満の検体では、テストラインの判定は困難です。
自己免疫性肺胞蛋白症血清と健常者血清の抗GM-CSF自己抗体濃度のカットオフ値は、1.65 U/mlですから、1.65U/ml以上で、3.5U/ml未満の検体では「偽陰性」となります。
4.偽陰性となる確率は、実際には非常に低い(1%未満)と考えられますが、臨床的に自己免疫性肺胞蛋白症が強く疑われ、ラインチェックAPAPで陽性ラインが確認できない場合は、GM-CSF吸入推進機構にご相談ください。
陽性検体と陰性検体のテストラインの見え方

ラインチェックAPAPを自己免疫性肺胞蛋白症患者血清診断に用いる場合の注意点
1.テストラインが見えたら陽性としてよい。
しかし、陽性=自己免疫性肺胞蛋白症ではない。
びまん性のすりガラス影があり、抗GM-CSF自己抗体が陽性となる他の肺疾患がある。膠原病肺、過敏性肺臓炎、サルコイドーシスの中に自己抗体陽性となる症例が確認されている。我が国では少ないが、肺クリプトコッカス症やノカルジア症の一部に自己抗体陽性となる症例が報告されている。また、クローン病、深在性子宮内膜症において抗GM-CSF自己抗体が陽性となる症例が知られている。これらのことを念頭におきつつ、CT画像や血清マーカーの値や臨床症状も勘案しながら、慎重に診断してほしい。
2.テストラインが見えない場合に偽陰性がありうる。
ラインチェックAPAPは、検出下限が3.5U/mlであり、判定が目視であることから低濃度の検体で、信頼性に欠ける。陰性だった場合に、自己免疫性肺胞蛋白症ではないと診断するには注意を要する。つまり、3.5U/ml未満の自己免疫性肺胞蛋白症である可能性(おそらく1%未満)は常に考えておく必要がある。 陰性であったが、臨床的に肺胞蛋白症が強く疑われる場合は、気管支肺胞洗浄や経気管支肺生検などをを躊躇せず実施してほしい。
3.血清以外の検体には使用しないでほしい。
血清以外の検体を使用することを考慮していないので、血清以外の検体に使用して抗GM-CSF自己抗体の有無を判定しないでほしい。特に気管支肺胞洗浄液は、擬陽性が出る可能性がある。また、血清でも乳糜血清や溶血血清では、正確に判定ができないことが分かっている。4度保存した血清は、2週間以内であれば、使用できる。